鳥取県「トマト」にトマトハモグリバエの特殊報
鳥取県病害虫防除所よりトマト トマトハモグリバエの特殊報が発令されました。
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平成13年度病害虫発生予察特殊報第2号
平成14年2月25日
鳥取県病害虫防除所
1 病害虫名:トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae BLANCHARD)
2 作物名:トマト
3 発生確認場所:北条町、大栄町、赤碕町
4 発生確認の経過
(1)本種はアメリカ大陸原産の害虫で、アフリカ、南アジア、中国などで侵入・定着が確認されて
いる。国内においては、平成11年に沖縄県で初めて侵入が確認され、現在までに30都府県に
おいて発生が報告されており、周辺地域では中国四国7県と近畿5県となっている。
(2)本県では、平成13年10月に県中~西部の施設栽培トマト及びミニトマトにおけるハモグリ
バエ類の発生状況を調査した結果、発生ほ場率は約53%(調査ほ場数21、発生ほ場数11)
で、県中部の北条町、大栄町、赤碕町で発生が確認された。発生ほ場から蛹及び成虫を採集し、
持ち帰って観察した結果、トマトハモグリバエと推定された。そのうち2ほ場からサンプリング
した成虫を農林水産省神戸植物防疫所に送り同定依頼したところ、平成14年2月に本県では未
確認のトマトハモグリバエと確認された。
5 形態及び生態
(1)形態
成虫は体長1.3~2.3mm、大きさはマメハモグリバエやナスハモグリバエなどとほぼ等しく、体色
もほぼ同じである。そのため肉眼による識別は困難であるが、実体顕微鏡下で頭部を観察すること
で簡易に識別はできる。本種では頭部の外頭頂剛毛の着生部は黒色であるのに対して、前述2種は
黄色である。しかし、体色には個体変異があるため、正確な同定には雄交尾器の観察が必要である。
幼虫は淡黄色のウジ状で、3齢幼虫の体長は約3mmである。
蛹は長さ1.3~2.3mm、俵状で黄褐色を呈する。
(2)寄生植物
マメハモグリバエなどと同様、極めて多くの植物に寄生する。また、雑草のテリミノイヌホオズキ
やスカシタゴボウにも寄生することが確認されている。
国内で寄生が確認されている植物は以下のとおり
ウリ科:メロン、キュウリ、カボチャ、シロウリ、ヘチマなど
マメ科:インゲン、ソラマメ、アズキ、ダイズなど
ナス科:トマト、ナス、ピーマン、ペチュニアなど
キク科:マリーゴールド、ゴボウ、シュンギクなど
アブラナ科:ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、コマツナ、ブロッコリーなど
アオイ科:オクラ
(3)生態
雌成虫が産卵管で葉に開けた穴の内側に卵を産み付ける。葉肉内でふ化した幼虫が葉内を食害し
ながら潜行し、絵描き状の被害を発生させる。老熟幼虫は葉の外に出て地表に落下し、蛹化する。
被害や蛹化の方法はマメハモグリバエと酷似しているため、これらによる識別は困難である。
卵から成虫になるまでの期間は、気温20℃で約27日、25℃で約18日、30℃で約14日
である。
(4)被害
マメハモグリバエやナスハモグリバエによる被害と同様に、幼虫が葉肉内を食害潜行し、絵描き
状の被害を発生させる。キュウリやトマトでは上位葉まで幼虫の潜行が認められ、寄生が著しい
場合には葉が白化する。食害の様相はその他のハモグリバエ類(マメハモグリバエ、ナスハモグリ
バエ)とよく似ており、識別は困難である。
また、これまでマメハモグリバエやナスハモグリバエでは大きな問題とならなかったウリ科作物
で被害が大きい傾向がある。
6 防除対策
(1)ウリ科作物で被害が発生しやすいので、特に注意が必要である。
(2)ハモグリバエ類(トマトハモグリバエ、マメハモグリバエ及びナスハモグリバエなど)が寄生
していない苗を確保し、食害痕のあるものは定植しない。
(3)雑草にも寄主となる植物があるので、ほ場及びほ場周辺の除草に努める。
(4)施設栽培では、成虫の侵入を防ぐため、天窓や側窓に寒冷紗などのネット(1mm目合)を張る。
(5)発生ほ場の作物残さは重要な発生源となるため、ほ場に放置せず、土中に埋めるかビニールで
覆うなどして処分する。
(6)トマトハモグリバエに登録のある薬剤はないが、マメハモグリバエと混発していることが多い
と考えられるので、マメハモグリバエを対象とした登録農薬で対応が可能である。
7 その他
既存のハモグリバエ類と異なる発生を認めた場合や不明な点がある場合には、病害虫防除所又は
園芸試験場などへご連絡下さい。