園芸用殺菌剤 ジマンダイセン水和剤のカンキツ黒点病に対する効果について

2026.8.5

ジマンダイセン水和剤とは
ジマンダイセン水和剤は1964年に日本で発売されて以来、60年以上の販売実績を持つ園芸用殺菌剤で、アメリカのローム・アンド・ハース社(現在のCorteva Agriscience ™社)によって創製されたマンゼブ80.0%(ジチオカーバメート系に属する化合物)を主成分とする農薬です。2021年から日産化学株式会社が日本と韓国での販売を担っています。
ジマンダイセン水和剤(マンゼブ水和剤)の特長
①病原菌に対する作用点が多いため、耐性菌発生のリスクが低く安定した効果を発揮します。
(FRACコードM3に属します)
②作物の病害対策に広く利用されている殺菌剤です。
日本での登録は2026年6月現在で45種の作物、100種以上の適用病害に及んでいます。さらに新たな作物や病害、また無人航空機散布などの適用拡大にも取り組んでおり、過去1年以内でもオリーブ・チューリップといった作物や、かき・くり・さといもの無人航空機散布への適用拡大を実現しました。
③耐雨性に優れています。
ジマンダイセン⽔和剤独⾃の製剤技術により、薬剤の葉や果実への付着性および薬液の表⾯張⼒を⾼めています。この製剤技術によって有効成分の放出抑制が出来るため、予防効果の持続性にも優れ、⼀定の降⾬量までであれば有効成分が溶出し分散しても殺菌効果をもたらすことができます。

ジマンダイセン⽔和剤は散布後に降⾬があったとしても、⼀定の有効成分が残存していれば⼗分な効果を発揮します。これはジマンダイセン⽔和剤独⾃の耐⾬性と付着性に優れた製剤技術「レインシールド®」テクノロジーにより、有効成分が分解されて⾏く過程で「エチレンビスジチオカーバメイト(EBDC)」が適度な⾬によっても徐々に溶出され拡散されることで⻑期に渡って病害感染を防ぐ効果が期待できます。また、ジマンダイセン⽔和剤の希釈液が⾼い表⾯張⼒を持つように設計されているので、特にかんきつの葉に付着した薬液はこぼれ落ちにくく、より多くの有効成分が効率的に葉上に留まります。さらに乾燥後は、⾬や露などにより有効成分の樹内への再分散を促す効果も期待できるのです。
有効成分マンゼブについて
ジマンダイセン⽔和剤の有効成分マンゼブは、病原菌細胞の活動に不可⽋なエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)の⽣産を抑制します。具体的には、細胞内に存在するミトコンドリア内外のエネルギー⽣産⼯程の6ヵ所で作⽤し、作⽤点が複数存在することで病原菌による薬剤耐性を抑えられると考えられます。(マンゼブはFRACの分類では、耐性菌リスクが低いとされています)
かんきつの病害防除
ジマンダイセン水和剤は多種多様な作物や病害に適用がありますが、特に果実の商品価値に大きく影響するカンキツ黒点病に対して優れた予防効果が認められています。

■カンキツ黒点病の発生時期
カンキツ黒点病は、すでに病原菌に感染している保菌枯枝が伝染源となり、⾬やしずくによって果実に感染する⾬媒伝染性の病害です。
そのため保菌枯枝が多い圃場、かつ降⾬が多い年に多発します。感染時期は4〜10⽉頃まで、果実では5〜9⽉に発病が多く⾒られます。
異なる感染時期のカンキツ黒点病の特徴

図1 異なる感染時期のカンキツ黒点病の特徴



■ジマンダイセン水和剤のかんきつ類の登録内容と基礎データ
①ジマンダイセン水和剤のみかん・かんきつにおける登録内容
本剤は栽培期間中に発生する病害に対して幅広い効果を有しますが、特に黒点病への効果が優れていることから、ドローン散布なども念頭に、生産現場の規模に合わせて散布水量に幅を持たせた登録を取得しています。
ジマンダイセン水和剤のみかん・かんきつ類への病害登録内容

表1 ジマンダイセン水和剤のみかん・かんきつ類への病害登録内容【抜粋】



②ジマンダイセン水和剤の黒点病に対する効果
本剤のカンキツ黒点病に対する効果は発売開始から60年以上たった今でも安定しています。(⼀社)⽇本植物防疫協会の新農薬実⽤化試験において、本剤は対照薬剤として使⽤されており、最近5年間の試験結果でも、約9割で供試薬剤を上回る効果を⽰しています。

③基礎活性と耐雨性
ジマンダイセン⽔和剤のカンキツ黒点病に対する⾼い殺菌効果は、病害に対する有効成分「マンゼブ」の基礎活性もさることながら、その優れた耐⾬性にも起因します。 下の試験では、みかん果実にジマンダイセン⽔和剤と対照剤Aを散布、散布18時間後から⼈⼯降⾬装置で1時間あたり50㎜の⾬を各累積降⾬量に達するまで降らせ、果実表⾯への有効成分残存量を⽐ 較したもので、対照剤に⽐べて多くの有効成分が残存していることが分かります。これはジマンダイセン⽔和剤独⾃の製剤技術「レインシールド®」テクノロジーによるもので、耐⾬性の⾼さが効果の安定にもつながっています。

図2

有効成分が雨で流れ落ちづらい、「レインシールド®」テクノロジーを採用

④みかん果実への黒点病に対する防除効果と降⾬の影響
降⾬後、散布した有効成分が果実表⾯に多く残存できていたとしても、それが⼗分に効果を発揮できるレベルでなければ意味がありません。下の試験ではジマンダイセン⽔和剤400倍薬液を温州みかん(品種:興津早⽣)果実に背負い噴霧器にて散布し、散布処理18時間後に50㎜/hに設定した⼈⼯降⾬装置を⽤いて降⾬処理を実施、累積降⾬量で100㎜、200㎜、300㎜、400㎜区を準備しました。その結果、降⾬量が多くなるにつれて残存量が少なくなるものの、累積400㎜の降⾬処理区でも50%以上の有効成分の残存率を確認することができました(図2)。

また、同時試験ではありませんが、同様の⽅法で散布および降⾬処理を⾏い黒点病柄胞⼦希釈液を直径8㎜のろ紙に含ませ、1果実に6ヵ所貼り付け、果実の発病を調査した結果、累積300㎜の降⾬処理後でも黒点病の発⽣は認めらませんでした。これは果実上に発病を抑制するに⼗分な有効成分量が残存していることを⽰しています(図3)。
降雨量と温州ミカン果実状の黒点病予防効果

図3 降⾬量と温州ミカン果実上の黒点病予防効果 2022年⽇産化学社内試験


また、ジマンダイセン⽔和剤600倍は、耐⾬性において対照剤と⽐較しても優れた防除効果が確認できました(図4)。
降雨量と温州ミカン果実状の黒点病予防効果

図4 カンキツ黒点病に対する各種殺菌剤の予防効果に及ぼす降雨量の影響 2022年日産化学社内試験


⑤降⾬により流亡した薬液の役割(再分散)
カンキツ黒点病は枯枝上の柄⼦殻が伝染源となり、⾬滴によって柄胞⼦が放出・⾶散し、果実に感染し発病します(図6)。
⼀⽅、ジマンダイセン⽔和剤は、レインシールド®テクノロジーによる優れた耐⾬性により降⾬による薬剤の流亡は他剤よりは少ないものの⽣じることから、「散布によって枝や葉に付着した有効成分マンゼブが降⾬によって再分散、その薬液が柄胞⼦と接触することで胞⼦の発芽を阻害し果実への感染を予防するのではないか?」(図7)との仮説を⽴て、モデル試験で検証しました。
降雨による枯死枝(伝染病)からのα柄胞子の分散による果実発病のメカニズム

図6 降⾬による枯死枝(伝染病)からの柄胞⼦の分散による果実発病のメカニズム


降雨による有効成分の再分散による発病抑制メカニズムの仮説

図7 降⾬による有効成分の再分散による発病抑制メカニズムの仮説



本剤400倍希釈液を温州ミカン苗(⻘島温州)に散布し18時間経過後に葉を回収、図8のように最上段に500枚の葉を⼊れ、その直下にほぼ同量の枯死枝(罹病枝)、最下段に黒点病の発病がない健全な温州ミカン果実(品種:興津早⽣)を配置しました。
薬剤を含む雨滴の分散によるカンキツ黒点病予防効果の検証方法

図8 薬剤を含む雨滴の分散によるカンキツ黒点病予防効果の検証方法


1時間に40㎜の割合で10分間の降⾬処理を施し、その後に果実を回収し28℃の暗所湿室に9⽇間保持し、果実の発病状況を観察しました。その結果、ジマンダイセン⽔和剤400倍希釈液を散布したミカンの発病果実割合は無処理に⽐べて⼤幅に少なく、しかも発病⾯積率も5%未満のきわめて軽微な発病果実が全体の80.6%を占めていました(図9)。これは⾬滴中に柄胞⼦が含まれていても、散布されたジマンダイゼン⽔和剤に含まれる有効成分マンゼブが胞⼦を殺菌し、ミカン果実への発病を抑制していると考えられます。
果実上部に設置した葉へのジマンダイゼン水和剤散布の有無が果実の発病面積割合に及ぼす影響

図9 果実上部に設置した葉へのジマンダイゼン⽔和剤散布の有無が果実の発病⾯積割合に及ぼす影響 2023年⽇産化学社内試験


⑥まとめ
ジマンダイセン⽔和剤のカンキツ黒点病に対する予防効果は、これまでの圃場試験結果に基づき「散布後の累計降⾬量が概ね250㎜〜300㎜に達するまで効果が持続する」とされています。今回はモデル試験ではあるものの、散布後の累計降⾬量が300㎜に達した時点でも散布直後の約7割、400㎜でも約5割の有効成分が残存していることが⽰されました。さらに別試験として、累積降⾬量300㎜区の果実に病原菌を接種しても黒点病の発⽣を抑制する結果を得ました。 ジマンダイセン⽔和剤は有効成分マンゼブの活性だけでなく、独⾃の製剤技術「レインシールド®」テクノロジーによる優れた耐⾬性により、降⾬時においてもカンキツ黒点病に安定した効果があることが確認できました。また⼀⽅で、⼀部の有効成分は降⾬とともに流亡した⾬滴中に溶出します。この⾬滴中の有効成分がカンキツ黒点病の柄胞⼦と接触することで胞⼦の発芽を阻害し、かつ、有効成分の再分散により果実の黒点病感染の予防につながるというそのメカニズムも確認できました。
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